今週5月11日から5日間にかけて、ローマ教皇ベネディクトがイスラエルと西岸地区を訪問しています。一般のユダヤ人たちの中ではカトリックとプロテスタントを混同している人たちが多くいるようなので、簡単な説明を彼等のためにしましょう。
ローマ・カトリックの総本山は、今日のイタリアのローマ市内にある世界最小の独立国、バチカン市国(1929年成立)にあります。ここに世界宗教化したカトリック教会を統治する、ローマ教皇の家があります。ローマを東京に似せるとしたら、バチカン市国は皇居の様です。
バチカンには、イエスの12弟子の1人ペテロが埋葬されたという伝承があり、2世紀後半には彼を記念した廊がすでに建てられていた様です。その跡地に、西暦326A.D.頃コンスタンティヌス帝が教会堂を建て、時代とともに増築されていきました。今日のバチカン国の中心にある聖ピエトロ大聖堂がそれです。原始教会時代(ナザレ人イエスの死後から新約聖書がまとめられていった2世紀半頃まで)キリスト教界の精神的中心はエルサレムでした。しかしペテロが殉死したと思われるその場所に宮殿を建てたことにより、ローマはエルサレムに代わり、全キリスト教会に最も影響を及ぼす場所と化し、今日の中心的地位を確立していきました。
教皇の今日の世界的権威の背景には、教皇が「イエスの弟子ペテロの直系の霊的継承者である」というバチカンの主張があります。そもそも金銀に包まれたバチカンの教皇が、「人間を捕る漁師として、それも“ユダヤ人宣教”に生涯をかけた素朴な漁師ペテロ(ガラテヤ人への手紙2章7節)」を信仰の祖としているとは驚きです。非カトリック系キリスト教徒たちは、何をもってペテロの信仰を霊的に継承しているか、この点を大きく疑問視しています。
カトリックの主張は聖書に基づいています。( )内は彼等の解釈です。
シモン・ペテロが答えて言った。「あなたは、生ける神の御子キリストです。」するとイエスは、彼に答えて言われた。「‥‥このことをあなたに明らかに示したのは人間ではなく、天にいますわたしの父です。ではわたしもあなたに言います。あなたはペテロです。わたしはこの岩(ペテロが殉死する場所)の上にわたしの教会(ローマ・カトリック教会)を建てます。」(マタイによる福音書16章16〜18節)
一方、プロテスタント教会の主張はこうです。キリストの教会は、ある特定の人物(例えば、ペテロという聖人化した一人の男)の上に建設されるのではなく、神の啓示を受けて救われる全ての者の信仰告白(彼等の解釈では、これが岩)の上に建てられていくものです。
バチカン市国の国旗は、左半分が黄金色で、右側に金と銀の鍵があります(写真参照)。この鍵は、聖書の同箇所の19節にイエスがペテロに対して「わたしは、あなたに天の御国の鍵を与えます。」と言われた時の“鍵”を象徴しています。この聖書箇所のバチカンの理解は、現在教皇がこの天国の鍵を預かっており、このお方を通して、信じる者に御国が開かれていくというものです。
この解釈が納得いくものかどうかは、それぞれの判断にゆだねることにします。ただ、教皇のイスラエル訪問は政治的な目的ではなく「平和の使者」として訪ねることを公式表明しています。一方で、イスラエル国内のキリスト教にゆかりのある場所のあちこちをバチカン市国の所有地にしたいという要請を出す訪問でもある様です。こうした教皇の言動は、バチカンとイスラエルのどちらを優先にした訪問なのか、教皇の「平和メッセージ」に政治の臭いがします。
2009年5月14日木曜日
バチカン市国、国旗の図柄はどういう意味?
ラベル: バチカン、カトリック, 政治, 聖書
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1 コメント:
教皇の言動は、バチカンとイスラエルのどちらを優先にした訪問なのか、教皇の「平和メッセージ」に政治の臭いがします。
平和メッセージはメッセージだったと思います。また、どんな宗教のリーダーもまずは自分の身内のことを先に考えることは不思議ではありません。
しかし、人類が滅びるまでバチカン市が思っていることは無理でしょう。それに、イエスもユダヤ人でしたからね。
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