2009年2月28日土曜日

イエメン共和国からのアリアー


先週、イエメン共和国(アラビア半島南部に位置する国)のユダヤ人家族10名が同国で高まるユダヤ人迫害を逃れるためにイスラエルに帰還(アリアー)しました。同国にはまだ230〜270名のユダヤ人が存在しており、今回帰還したベン・イスラエル氏とその家族はイエメン系ユダヤ人共同体のリーダー的存在でした。[2月20日付エルサレム・ポスト”Yemenite family makes aliya in secret operation.”]

反セム主義者によるユダヤ人への迫害や嫌がらせ行為は2009年に入り急増しています。その理由は年末年始の3週間に行われたイスラエル国防軍の”ガザ侵攻”への反発と見られています。2009年1月のヨーロッパ各地やそれ以外の全地域の被害件数は250件となっており、昨年のこの時期の3倍を記録しています。被害の多くは、世界のユダヤ人コミュニティーの建造物、墓地、会堂(シナゴーグ)への破壊行為や落書きなどです。

ユダヤ人への嫌がらせ内容と被害件数は、アンチ・デファーメーション・リーグ(Anti-Defamation League:ユダヤ名誉毀損防止連盟)が詳しく報告しています。報告では、ユダヤ人迫害が起きた場所は、オーストラリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、リトアニア、スロバニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、ウクライナとヨーロッパの全域であり、加えてロシア、トルコ、又ウルグアイ、ベネズエラと南米2国での事件も報告されています。イギリスの被害件数においては過去25年で最多を記録中で、フランスにおいては、イスラム教徒とユダヤ人の人口が、他のヨーロッパ諸国よりも多いため、衝突が多く、一般人によるユダヤ人への嫌がらせも増えているようです。

[参考:1)ハアレツ紙 ”Jewish Agency: Anti-Semitic acts in Jan. 2009 triple last year's records”2)CNNレポート"Anti-Semitic attacks rising, UK watchdog reports"

祈り)迫害される世界のユダヤ人の心身の安全と救いのために祈りましょう。


2009年2月21日土曜日

村上春樹「エルサレム賞」


今月15日、作家の村上春樹さんがエルサレムにおいて「エルサレム文学賞」を受賞されました(写真:イスラエル大統領シモン・ペレス氏と村上氏)。

村上氏の受賞スピーチは「47NEWS」で読むことができます。
村上春樹さんの文学はイスラエル国内でも良く読まれていますが、彼のスピーチは多くのエルサレム市民には不評だったようです。

村上氏が「卵の殻と中身」をイスラエル軍とガザ住民に例えたと思われるこのスピーチは、日本では多数の新聞記事やコラムで「勇気ある批判」として讃えられました。私個人としては、村上氏がもう少し中東情勢の実態を掴んでいたら、異なる表現を選んでいただろうにと考えました。しかし日本の一般市民に否定的な見方が増えるのも、報道の仕方に偏りがあるからなのでしょう。

下記は「47NEWS」に記載された各新聞社の村上氏のスピーチに関する報道の一部です。詳しくは先に記したサイトでじっくり読んでみて下さい。抜粋したのは偏った表現と思われる箇所です。**は私のコメントです。

ー(長崎新聞のコラムから)「作家、村上春樹さんは、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」をあえて受ける決断をした。イスラエルはガザ空爆で大勢の民間人を殺害している。賞を受ければ、その戦争犯罪を認めてしまうことにならないかと、受賞を引き止める声もあった。15日の授賞式で村上さんは、戦争を起こす体制を壁、人間を壊れやすい卵に例え、「わたしは常に卵の側に立つ」と言い切った。戦争当事国に乗り込んで真摯(しんし)に命の尊さを説くその姿は、世界の人々の魂を揺さぶった。」**「戦争犯罪」は戦争を交わした両者の側にそれぞれあります。ガザ住民を苦しめてきたテロ組織の存在と、イスラエルに自爆テロやロケットを送り込む行為を度外視しての「戦争犯罪」は不適切です。「村上さんは‥‥命の尊さを説く」ーもちろんです。しかしコラムニストは、ユダヤ人はまるで命の尊さを知らない民族であるような印象を読み手に与えています。彼等はホロコーストを乗り越えた民族なのに‥‥。

ー(四国新聞のコラムから)「村上さんは欧州系言語以外の作家としては初めて、同国の文学賞を受賞した。それ自体は快挙だが、折しもパレスチナ自治区ガザへの無差別攻撃があったばかり。辞退すべきとの声も上がっていた。だが彼はあえて受けた。」**「無差別攻撃」との表現を使用したコラムニストは、国防軍が何を前提に闘っているのか、どこに焦点を合わせて攻撃したかが分かっていない様です。

ー(信濃毎日新聞のコラムから)「さらに村上さんは言葉を継ぎ、卵は独自の心を持ったわたしたち一人一人、壁は「制度」だと説明。この制度が、わたしたちを殺したり、他人を殺させたりする、と述べた。イスラエルに当てはめると、自らを守る正当な攻撃として、パレスチナ人を殺させる国家も制度なのだろう。」**イスラエルに「パレスチナ人を殺させる制度」があるなら立証して欲しい。ガザ住民はユダヤ人を助けるために真実な証言をすると「スパイ行為」を働いたとしてハマスに首を刎ねられます。一方、イスラエルには、テロリストや囚人を死刑にする法律はありません。

ー(共同通信の記事)「イスラエルの文学賞、エルサレム賞の受賞が決まった作家の村上春樹氏に対し、大阪市に拠点を置く非政府組織(NGO)『パレスチナの平和を考える会』がウェブサイトに掲載した公開書簡で「受賞はイスラエルの対パレスチナ政策を擁護することになる」として受賞辞退を求め、賛同者を集めている。同賞は「社会における個人の自由の理念を表現した著作の筆者」に与えられる。書簡は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザで行った「虐殺や封鎖政策などはパレスチナ人の自由を抹殺する行為」だと指摘。村上氏の受賞により「イスラエルがあたかも自由を尊重している国であるかのようなイメージが流布される」と懸念を示している。書簡への賛同を示す署名は欧米諸国を中心に800件に達した。主催者のウェブサイトによると、村上氏は15日にエルサレムで開かれる授賞式に出席する意向を示した。同会の役重善洋事務局長は「受賞はイスラエルの人道犯罪に加担することになる」と主張。村上氏の事務所はコメントしていない。」**この非政府組織への賛同者がどれ程多くいても、共同通信社は、この組織が指摘する「ユダヤ人の虐殺行為」という点が、ユダヤ人への敵意に満ちた偏見であることを、調べた上で報道すべきでした。

これからの報道に、公平さと真実を暴いて伝える勇気が加えられることを願います。

英語の分かる方へ:村上氏のスピーチ(英訳)はハアレツ紙に掲載されていますが、その記事の下にはコメントの書き込みがあります。書き込みを読むと、日本人以外(多くはユダヤ人やアメリカ人ですが)の考え方が見えてきます。もしくは、あなたの考えを書き込み、世界に主張してみてはいかがでしょうか。

祈り)日本人がイスラエルで直面している実際的問題に気づきますように。

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選挙結果、その後

イスラエルの国会(クネセット)は一院制議会で、議員の任期は4年です。
2月10日に行われた総選挙で、国会120議席を12政党で分ち、右派政党が65議席と過半数を獲得しましたが、議員の顔ぶれは様々です。その内訳を見ると、アラブ人が13人、ドルーズ人4人、女性21人、ユダヤ教正当派28人、新議員が38人となっており、2006年の国会総選挙の時よりも、こうした少数グループの数が若干増えたようです。イスラエルはアメリカに次ぐ多人種国家なので、この多様化した議員をまとめる首相が求められます。

20日、右派野党リクード党首のベンヤミン・ネタニヤフ氏が首相としてシモン・ペレス大統領に指名されました。就任式は6週間後の予定です。

祈り)イスラエルの中東和平をこうした議員たちが担っていきます。1人1人の上に知恵が与えられ、正しい決断がくだされていくようにお祈りください。特にハマスに拉致されているギラッド・シャリート兵が一日も早く解放されるように。

2009年2月14日土曜日

選挙結果

去る火曜日に、イスラエル新首相を決める国政選挙が行われました。その投票の結果、ベニヤミン・ネタニヤフ氏とチッピ・リブニ氏が僅差だったため、どちらが首相になるかはまだ決められない状態です。今回の選挙で、国会の120議席中、リクード党を含む右派数党が過半数(左派56議席に対して右派64議席)を取る結果となりました。一方、チッピ・リブニ氏所属のカディーマ党は、120中29議席を獲得して第一党になったものの、右派のリクード党は28議席、そして政策面では異なれど、右派のイスラエル・ベイテイヌ党やシャス党がそれぞれ15議席11議席と議席数を増やし、彼等右派の主張に対して国民の支持が集まりました。

どちらが首相になっても、与党としては議席数が足りないので、他党との連立政権を考えなければなりません。そこで誰がどの党と組むかでイスラエル政界はもめています。

もめている背景には、対レバノン、シリア、ヨルダン、エジプト、特にイランとの外交や、エルサレム分割案、又はシリアとの和平確立の条件とされているゴラン高原返還とどう向き合うか等が問題として挙がっており、テレビなどのメディアで連日のように論争が繰り広げられています。

祈り:イスラエルは世界一外交が難しい国です。首相次第で、イスラエルの国土が削られたり、エルサレムが分割されたりしかねない状況に現在立たされています。目に見える形では首相次第であったとしても、この地にいるからこそ聖書の言葉にたより、真の救い主を求める者が更に増えますように。

2009年2月7日土曜日

水不足

イスラエルでは、現在深刻な水不足であり、水不足に対する緊急対策を早急に取る必要があります。


報道によると今年1月中旬までで、観測史上最低の降雨量で、ほとんどの地域で例年の30%しか雨が降っておらず、このまま雨が降らない年が四年続いたら、イスラエルの唯一の水資源であるガリラヤ湖が干上がってしまう危険性が指摘されています。

祈り)イスラエルに雨が降る様にお祈りください。
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2月10日(火)イスラエル国政選挙

イスラエルでは2月10日(火)総選挙が行われ、オルメルト現首相に代わり、新しい首相(第13代目)が選出されます。
イスラエルは対レバノン、シリア、ヨルダン、エジプト、イランとの関係、国内のイスラエル国籍を持つアラブ人(現在人口710万人中2割がアラブ系と言われています)との複雑な社会問題、深刻な水不足、ひろがる格差社会と教育問題、エルサレム分割案、ゴラン高原返還など、抱える問題は山積みです。これに対して新首相に求められるものはあまりにも大きく、国民はどの側面をみて投票するか迷っているようです。

現首相は、2006年に第2次レバノン戦争において失敗したことや昨年の汚職スキャンダルもあり、昨年末から政府は分裂し、国民の支持をすでに失っています。
今週の候補にあがっている中心人物は、支持率の高い順から以下の通りです。
ーーーーー
ベニヤミン・ネタニヤフ氏:右派政党リクード党。第9代元首相。イランの核武装に対しては教鞭な立場をとり、シリアとの和平交渉のためにゴラン高原を手放すことやエルサレム東西分割案については反対すると約束している。

チッピ・リブニ氏:現首相と同党のカディーマ党で、現外務大臣。女性ながら国防軍や特殊工作機関(モサド)の経験を持つ。彼女はアリエル・シャロン元第11首相から信頼されており、彼が任期中、脳卒中で倒れた際に、現職の外務大臣の地位についた。不人気のオルメルト現大統領を強く批判し、高い支持を得ている。

エフード・バラック氏:労働党党首で、現国防相。第10代元首相。1972年のミュンヘンオリンピックで、PLO幹部によってイスラエル選手たちが殺害されるというテロ事件があったが、当時イスラエル国防軍の特殊部隊だった彼は、この時、女装してPLO幹部に勇敢にも接触し、ユダヤ人選手殺害に関与したテロリスト3名を暗殺するのに成功している。

祈り)今週の選挙でふさわしい指導者が選ばれるようにお祈りください。



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