2009年7月31日金曜日

イスラエルの夏=暦はアブの月

去る7月30日はユダヤ暦ではアブの月の9日で、ユダヤ史では神殿崩壊日にあたります。ユダヤ史の記録によると、1942年前のこの日に、ローマ軍により神殿が崩壊しました。一部の理解では、最初の神殿(ソロモンの建てた神殿)もバビロン軍により、紀元前586年の同日に崩壊したと言われています。ユダヤ史上、アブの月の9日は呪われているのでしょうか。神殿崩壊以降もこの日に限りユダヤ人に対して悲しい出来事が重なりました。

例えば、紀元136年の同日、ローマ皇帝ハドリアヌスがユダヤ教を徹底的に弾圧し、皇帝はカナンという聖書の呼び方をパレスチナと改名しました。1025年同日には、ローマ法王ウルバン二世による十字軍が始まりました。これはユダヤ人迫害を前提とした醜い暴力的宣教運動としてユダヤ史に記録されています。又1290年同日は、英国王エドワード一世によってユダヤ人追放が合法化されました。1492年の同日には、スペイン皇帝もユダヤ人追放を決定し、悪名高いスペインのユダヤ人迫害が始まりました。近代では1942年同日、ワルシャワから数十万人のユダヤ人が一挙にトレブリンカ強制収容所に移送されるなど、その後も“アブの9日”関連の悲劇は続きます。
アブの月の9日は聖書に定められた祭日ではありませんが公共施設や学校などは休日になります。この日、宗教的ユダヤ人の間では、神殿崩壊とこれらの悲痛な歴史のゆえに断食し、メシア到来を神にひたすら祈ります。更には一部の宗教熱心なユダヤ人はアブの月の9日をメシアが誕生した日としてお祝いしたり(!)します。それほどまでに神殿を失った悲しみとメシア待望は彼等に重大でした。さて今日超正統派が黒服のみを着るのはどうしてかという質問に、ある人は「(神殿が崩壊して)喪に服しているからだ」と応えました。彼等はいつまで喪に服すのでしょうか。
今年のアブの月、Ynet新聞とゲシェル民間組織Gesher organization)が共同で神殿を再建して欲しいか」というアンケート調査をとりました。すると一般市民の64%(宗教派97%、伝統派91%、世俗派47%)がそれを当然望むと応えました。
エルサレムを分割させようとする声が世界で高まる中、こういうユダヤ人達の声はどこまで世界に届いているのでしょうか。
写真)イスラエル博物館にある大ヘロデ王時代(イエスの時代)の神殿模型。
参考)7月30日付:Ynet紙[Survey: 64% want Temple rebuilt
祈り)アブの9日、この日に限って起きた惨事の多くに、キリスト教徒によるユダヤ人迫害や弾圧がありました。この史実は今もユダヤ人に大きな痛みを残しています。将来、同じ悲劇がアブの月に起こりませんように。又、ユダヤ人の内に秘めた声を世界がもっと理解し、彼等に聞くことができますように。
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3 コメント:

Hippy Monday☆ さんのコメント...

Sunny Kさん。

最近クリスチャンの女性と知り合い、色々な話をすることがありました。その時に初めて知ったのが、イスラエルのベツレヘム、ナザレなどにいるクリスチャンは原始キリスト教(と呼ぶのでしょうか?)で、イエスがユダヤ教から離れた当時の、もっともユダヤ教に近いキリスト教徒だと知り、新しい発見に間違えていた自分の知識を刷新しました。

彼女と色々な話をしながらも、イスラエル(エルサエム)のクリスチャン人口が減っていること、また今回の神殿の話とも多少関係してきますけど、また先日のアフガニスタンのユダヤ人の墓守りのお話とも関連しますけど、宗教・民族を超えて本当に人類の歴史として残さなければ、保存しなくてはならないものがたくさんある。

エルサレム分割問題は本当に色々な要素が固まりこれが良いという答えは私にもわかりません(ましてや私はイスラエルにおいては客人の一人です)。このエルサレムと言う場所は分割しても、万が一誰かが全てを破壊しても、世界から凄いひんしゅくをかってしまうのだろうなと。

イスラエル以外でも、昨日までXX国だったのに、今日からはXX国になったとかユーゴスラビアなどあの辺周辺の諸国も同じような問題を抱えている。島国の日本では考えられないようなことが諸外国には普通にあるのですよね。

聖地だからこその人々の「エゴ」がそこに住みついているのかなと・・一神教ではない私はそんな風に感じてみたりすることもあります。

月並みとなってしまいますけど、みなが仲良く暮らせる社会になってほしい。

agua さんのコメント...

sunny+Kさん、はじめまして。アメリカ合衆国在住のクリスチャンです。
アメリカのクリスチャン人口は多いですが、同じ神を信じているのにユダヤ教やユダヤ文化との関連性を考える人が少ないこと、メシアニック・ジューイッシュの教会が近所にないのを残念に思っています。

ハティクバを初めて聞いたのは、なんとYouTubeの初音ミク版だったのですが、それでもユダヤ人の歴史を思うと涙が湧いてきました。
Sunny Kさんはヘブライ語ができるのですね。ヘブライ語で聖書が読めたら解釈ももっと深まるだろうなぁと切に感じます。

今日は、私の知りたいキリスト教観点からみたイスラエルを日本語で解説してくださるこのブログを発見して、とても得した気分です! 次の更新をとても楽しみにしています。

sunny+K さんのコメント...

momojo さん、
「皆が仲良く暮らせる社会になってほしい」というのは私達共通の、そしてどの時代にもどの民族にもあった人間共通の心からの願いなのでは。つめていえば、神御自身のそもそもの願いがそれなのかもね。そして肌の色や話し言葉などお互いの違いを乗り越えるよう、神は叫んでいるのかもしれません。もちろん宗教家や政治家も声かれんばかりに叫んでいますが。。

agua さん、
ブログを見つけてくれて嬉しいです。
キリスト教は聖書の解釈一つで内部分裂してきた歴史があるので、イスラエルに対する見解一つでもagua さんが見た通り様々なのかもしれませんね。エルサレム旧市街内には有名な聖墳墓教会(イエス・キリストの墓跡と考えられている場所)がありますが、ここは6つの教派が所有権争いをした醜い歴史があり、今でも復活祭の時期になると6教派が分刻みで礼拝時間を奪い合って大変なんです。観光客や異邦人には見落としやすい、そういったごたごた、またはあまり日本には報道されないニュースをこのブログで紹介していければと願っています。「ハティクバ」は私も好きです。詩篇122篇6節。ご支援下されば嬉しいです。


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