2009年3月14日土曜日

ギラド・シャリート君


3年前のある日曜日の朝(06年6月25日)、ギラド・シャリート国防軍兵士はガザ地区の側で姿を消しました。当時19才の彼はガザ地区のパレスチナ武装勢力に拉致されたのです。テロ組織ハマスはシャリート君を、イスラエルに捕虜とされた仲間のテロリスト1000人を奪回するために人質とし、現在無謀な和平交渉の道具として利用しています。シャリット君を取り戻すために、イスラエル政府は彼の命と引き換えに捕虜を解放する方向で動き出しました。この政治に関してはここをお読み下さい。


シャリート君は、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんのようにイスラエル国内では大きく取り上げられ、彼を知らない人はいません。国外で彼について同情的にみるのはフランスぐらい(シャリート君はフランス系ユダヤ人で2重国籍保持者なので)かもしれませんが、このブログでは日本人の皆さんに彼の絵本を紹介しましょう。この絵本は、シャリート君が11才の時に書いたストーリーがもとになっており、子供の視点でアラブ人とユダヤ人の関係を描いています。以下はその私訳です。オリジナルはイスラエル国・外務省のページ(www.mfa.gov.il/MFA/MFAArchive/2000_2009/2008)からお読み下さい。

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When the Shark and the Fish First Met
『サカナ君がサメ君にはじめて出会ってから』

小さくてやさしいサカナ君が海で泳いでいます。
とっても大きくしずかな海の真ん中で。
すると、一匹のサメがサカナ君を食べようとやってきました。
スイスイっと急いでサカナ君は逃げました。
でもそのサメ君はその後をぴったりと追いかけてくるではありませんか。

突然、何を思ったのかサカナ君は泳ぐのをやめて、サメ君に向き直って言いました。

「サメ君、どうして大きな口を開けるの? 僕を食べないで。一緒に遊ぼうよ!」
サメ君はしばらくじっと小さなサカナ君をながめ、
口をすぼめて言いました。「よし、わかった。なら、かくれんぼをやろう。」

こうしてサメ君はサカナ君と遊びました。それも日が暮れるまで丸一日遊びました。
それからサメ君は、太陽が隠れる前にとお家に帰って行きました。

サメ君が家につくと、サメママは尋ねました。
「ねぇサメ君、今日なにやってたの? 魚をたくさん捕まえたかい?」
サメ君は答えました。
「ママ、今日はね、魚は捕まえてないよ。
でもね、サカナ君っていう、いい奴と遊んだんだ。」

「え?あんたはバカね。魚は食べるものよ。魚と遊んで何になるの!」サメママは怖い目で息子をにらみました。その晩、サカナ君の家でも……。

「おかえりサカナ君。今日は何したの? 外の海は穏やかだった?」サカナママは尋ねました。

そこでサカナ君はキラキラした目で答えました。「今日はサメ君っていう、かっこいい奴と遊んだよ!」
「えっ!あなたは気が狂ってるの!サメはあなたのお父さんとお兄ちゃんを食べた怖い動物じゃない。そんなのと遊ぶのはいけません。」悲しい顔でサカナママは注意しました。

つぎの日、いつもの海にサメ君とサカナ君はいません。
ふたりはつぎの日もつぎの日も現れません。
こうしてふたりは再び会うこともなく、何日も何週間も何か月も過ぎてゆきました。

それからある日、ふたりはばったり出会いました。すると直ぐさまふたりはお母さんのもとへ戻ってゆきました。再びふたりは会うこもなく、何日も何週間も何か月も過ぎてゆきました。

あれから一年が経ちました。
お互いを忘れたかのように、サメ君はいつもの海に出かけ、サカナ君もその海に泳いでいきました。そしてふたりは、またばったりと出会ったのです。
するとサメ君が先に口を開きました。
「おまえは俺の敵だぞ。ん、でも、仲良くなれるか?」
そしてサカナ君は体を小さくして答えました。「…いいよ!」

この時からふたりは内緒で遊ぶようになりました。次の日もその次の日も。
こうして何日も何週間も何ヶ月も過ぎて行きました。
そしてとうとうある日、サカナ君とサメ君は内緒に遊んでいたことをサカナママに打ち明けました。
ふたりは同じ様にサメママにも告げました。

ようやくこの日からふたりは自由になり、いつまでも楽しく過ごせるようになりました。
おわり[訳:sunny]

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サメ君が仲良くできるかとサカナ君に求めた言葉は、英語では we can make peace? となっています。「平和」が存在しない世界では、平和はつくっていくものです。ユダヤ人のシャリート君はサメ君とサカナ君が仲直りする世界を描きましたが、この本はイスラエル国内の少年少女たちの間で読まれています。ウィキペディアにシャリート君に関する詳しい情報が出ています。

祈り)ナザレ人イエスは「平和をつくる人たちは幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」と説きました(新約聖書マタイ伝5章9節)。平和を願う者たちの「平和づくり」は命がけです。シャリート君が一日も早く解放されますように。そして彼のメッセージがより多くの人に(特に彼を拘束しているテロリスト・グループに)届きますように。

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1 コメント:

匿名 さんのコメント...
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