この花をヘブル語で「ラケフェット」と呼びます。また「ネゼル・シュロモー【ソロモンの冠】」という名誉あるニックネームを持っています。ところで、和名を「豚の饅頭」と聞いて笑ってしまいました。丸パンのようなカタチをした球根をみて植物学者がこの花を「Sow Bread」と命名したところ、日本でも和訳のブタノマンジュウでこの花が当初紹介されていったそうな(ウィキピディア参照)。さて「根っこ」ではなく「花」に着眼して付けられたのが「ネゼル・シュロモー【ソロモンの冠】」という名前。以下はこの名前にまつわるユダヤ的伝承です。
ーーーーーーーー
その昔、ソロモンがイスラエルの王様だった頃、彼は自分の好きな冠のかたちを探し求め、国中の冠職人を宮殿に呼び寄せました。そこで職人たちは、こがねやしろがねをつかい、それぞれの目に麗しいカタチに仕上げて、王様に見せました。ところがそれらの冠は、王様の目にはどれも似たように写りました。王様の浮かない表情を見て冠職人たちは肩をがっくりと落としました。これにつられてため息をついたのが、イスラエル中の平野と山々だったといいます。
しばらくして、大地の花々が花冠にしてはと提案してきました。「わたしは赤い花。わたしを用いた花冠は素敵よ。」「黄色の花のわたしの方が最適だわ」花達はしきりに王様の前で自分達を売り込みました。王様は花達が好きでしたが「私にふさわしいものはなかった」と沈んだ声で花達に告げました。王様はうつむき、ごろごろした大地をぼんやりと眺めるのでした。そんな王様を周囲の者たちは見守りました。
彼等は王様が岩のある一点をじっと見つめているのに気づきました。間もなくして王様は目を見開いたかと思うと、さっと身を岩に寄せました。なにか宝を見つけたかのように。見れば、その岩陰には桃色のシクラメンがちょこんと座ってお辞儀をしているではありませんか。
けなげに咲くその花は王様の目になんとも麗しく写るのでした。王様は喜び「これぞ私の王冠にふさわしい。シクラメンよ、おまえのけなげさを王の品性にひとつ加えさせてくれ。」と声をかけました。
こうして王冠はシクラメンのかたちに象ることになりました。その後、新しい王冠を頭にのせたソロモン王は正しい裁きを下す王として国内に知れ渡り、イスラエルの都エルサレムに荘厳な神殿を建てた王としてその名を国外にまで轟かせるようになりました。それでも王様は高慢になることなく、謙虚で凛としていたといいます。シクラメンのおかげでしょうか。こうして王様は全ての者から愛されて亡くなりました。その時ソロモン王の死を一番悲しんだのがシクラメンだといいます。
参考)この伝承にはいくつかバリエーションがある様です。イスラエル人のヨハイ・コレム氏の草花サイト、と著書「All About Jewish Holidays And Customs」By Morris Epstein(page 45)を参考にしました。
にほんブログ村
0 コメント:
コメントを投稿