2010年5月8日土曜日

イスラエルの魔術信仰

アテン教(古代エジプト)、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など唯一神教を生みだしたこの地域では、多種多様の魔術文書(写真)が残されてきました。それは西アジア(バビロニア)から北アフリカ(エジプト)にかけての地域では太古から魔術信仰が存在したからです。それは現在進行形で、ユダヤ人を含むこの地域の生活の一部となっています。今も、邪視(アインハラー)、ハムサなどの魔除けグッズ、夜の魔女リリス信仰、黒魔術/白魔術などの呪術は、一神教世界の裏側にごく自然に存在しているからです。それを裏付けるかのように今月、エルサレム市のバイブルランド博物館では、現代ユダヤ人に今も影響を与える「魔術」を特集しています。この展示会は「Angels and Demons, Jewish Magic Through The Ages」と題して今月5日から始まりました。興味ある方は必見ですね。


ここで上記の魔術信仰を簡単に説明します。


夜の魔女リリス:ユダヤ教の中世からの伝承では、リリスは「アダムの最初の妻。リリスはアダムを愛したが性生活は満たされずエデンの園を去ってゆく。その後アダムはエバを愛し、これを第二の妻とした。一方でリリスは魔女(妖怪もしくは悪魔)に転じ、現在の妻を妬み、その子供たちに不幸と死をもたらす」存在として広く知られています(写真2:画ジョン・コリア作)。 今日も、魔女リリスは、幸せそうにしている妻達を妬み、夜間、風のようにスゥーと彼女らの部屋に忍び込み、その乳飲み子らを襲って病や死をもたらす存在として恐れられています。そこでリリスの嫌う青緑色(中東ではこの色には魔力があると信じられている)で窓枠を塗ったり、新生児護符を持ったりと迷信に基づく習慣が残っています。


邪視(アイン・ハラー:邪眼):これは、妬みにかられた女(魔女)の眼差しです。この目に睨まれると不吉が起こると信じられいます。邪視が自分に向けられないように、もしくはその魔術的パワーを身につけるためにと、今日では若い女性たちの間でアインハラー・アクセサリーが愛用されています(写真3)。ちなみにイスラエルでは、女が子を身籠ると、その子が生まれるまで(生後8日目まで)名前を隠しておく習慣があります。これはリリスに生まれてくる子の名を呼ばれると、その胎児に異変が生じるという迷信が背景にあるからです。


ハムサ:これは邪視に対抗する中東のお守りです。またハムサは「ハムサ、ハムサ、ツ、ツ、ツ」という不幸を免れるお呪(まじな)いの言葉です。護符としてのハムサは、掌の中央に邪眼を描いたもの(写真4)。大きく開いたその手は邪視を封じるのだそうです。ハムサはアラブ語で「5」を指します。つまり手の指5本で悪霊を祓うわけです。ユダヤ人の一般の家庭では、玄関や窓と向き合う壁にハムサを貼る習慣があります。窓から進入するリリスを追い払うためなのでしょう。ハムサ・グッズ——主にアクセサリーですが——は、イスラエル国内のどのギフトショップにも大抵置かれています。それらのお店では、観光客に「これを持つと幸運が訪れますよ。グッドラックを意味しますから。」なんて薦めています。何も知らずにオシャレだからって買うお客さんもいますが。イスラエルに来たら話題のハムサグッズを探してみてみては?


バイブルランド博物館では紀元4〜7世紀時代のハムサ護符が展示されているようです。私も近々見に行ってみようと思います。


祈り)中東の魔術信仰は歴史的に深く、ヘブライ大学には魔術文書を研究する学者達もいます。しかし聖文書ほど研究は進んでおらず、翻訳過程の文書も数多くあるようです。迷信を解くために学問が一石を投じてくれますように。それにしても一神教の裏側にある魔術的習慣が人を深く迷わせてしまうことがありませんように。イザヤ書8章18節〜22節


参考資料:[5月4日付け:"Sex and the Jewish mystic" by Sapa-DPA通信社]。
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